ITPとは

ITPは、血小板に対するlgG自己抗体の働きにより、血小数が減少する自己免疫疾患です。

lgGは、免疫グロブリンのひとつで、体内に入ってきた病原体などから体を守るためにはたらく抗体です。

ITP患者さんでは、血小板に対する「lgG自己抗体」が作られ、その働きにより、血小板の破壊が進んだり産生が抑えられることで、血小板数が減少します。

IgGとIgG自己抗体の違いは?

IgGは病原体などからからだを守るはたらきをする良い抗体です。一方、IgG自己抗体は、自分の体内成分に対してはたらく抗体で、通常は存在しませんが、ITP患者さんの体内では作られています。なぜIgG自己抗体がITP患者さんの体内で作られるかはよくわかっていません。

IgGとIgG自己抗体の違いは? IgGとIgG自己抗体の違いは? IgGとIgG自己抗体の違いは?

ITPにおけるlgG自己抗体のはたらき

ITPは自己免疫疾患と呼ばれる病気です。
免疫機能の過剰な働きによって、血小板に対する自己抗体が作られ、自分の血小板を壊します。

ITPは、自己免疫疾患の一つです。免疫の過剰な働きによって血小板に対する自己抗体が作られ、血小板に結合します。自己抗体が結合した血小板は脾臓のマクロファージなどによって壊され、血小板数が減少します。

ITPにおける血小板数減少の主なしくみ

抗血小板抗体 抗血小板抗体 抗血小板抗体

❶ ITPでは、血小板表面にあるたんぱく質に対するIgG自己抗体が産生されます

血小板と結合 血小板と結合 血小板と結合

❷ 血液中でIgG自己抗体が血小板に結合します

脾臓での血小板破壊 脾臓での血小板破壊 脾臓での血小板破壊

❸ IgG自己抗体と結合した血小板は、マクロファージと呼ばれる細胞に食べられ破壊されます

また、自己抗体が骨髄の巨核球に結合することで、血小板を作る働きが抑えられることによっても、血小板数が減少します。
このように、ITPでは主に「血小板の破壊が進むこと」と「血小板の産生が抑えられること」の2つの働きで血小板数が減少します。なぜ、免疫の働きが過剰になって自己抗体が作られるのかについてはまだ分かっていません。

参考 メディック 病気がみえる vol.5 血液 第2番
難病情報センターホームページ(2023年11月現在)
柏木浩和, 他. 成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド2019 改訂版. 臨血. 2019; 60(8): 877-896.

FcRnのはたらき

胎児性Fc受容体(FcRn)が、IgG自己抗体を含むIgGをリサイクリング(再利用)し、血中濃度を保ちます。

通常、FcRnはIgGをリサイクリングし、IgGの血中濃度を保っています

 lgGがFcRnと結合する
 FcRnと結合したlgGはリソソームでの分解をまぬがれる
 lgGがリサイクル(再利用)される

ITP患者さんではからだの中でIgG自己抗体がつくられているため、FcRnはIgG自己抗体を含むIgGをリサイクリングし、血中濃度を保っています​

 IgG自己抗体を含むIgGがFcRnと結合する
 FcRnと結合したIgG自己抗体を含むIgGはリソソームでの分解をまぬがれる
 IgG自己抗体を含むIgGがリサイクル(再利用)される

Ward ES, Ober RJ. Trends Pharmacol Sci. 2018;39(10):892-904.

ITPの症状について

血小板には、出血を止めるはたらきがあります。
そのため、血小板数が減ると出血しやすくなったり、出血が止まりにくくなります。

症状としては、次のようなものがあります。

● 点状や斑状の皮膚にみられる出血
● 歯ぐきからの出血、口腔粘膜出血
● 鼻血
● 便に血が混じったり、黒い便が出る
● 尿に血が混じって、紅茶のような色になる
● 月経過多、生理が止まりにくい
● 重症な場合は、脳出血

参考 難病情報センターホームページ(2024年3月現在)

JP-VJITP-24-00014(2024年3月作成)